「とんかつ」という料理は、良質の油をたっぷりと使って高温でカラリと揚げることがポイントと見えて、自宅で調理してもなかなかこれはという仕上がりにはならないものです。上等の肉を手に入れることができたとしても、「とんかつ」はやはりお店で食べたいと思います。お店で食べると言っても、どんなお店でもよろしいわけではありません。なんでも屋みたいな店の定食に付いてくる「とんかつ」では、やはり物足りない感じがありますし、かといって、老舗の「とんかつ専門店」みたいな店の肩肘ばったメニューも、また疲れるものです。「とんかつ」を食べるお店は、商店街の中に並ぶ、店構えは古いけれど、長い間、街の人たちに愛されてきた親しみやすさの漂うお店を選びたいと思います。食通としても著名な小説家の池波正太郎の真似をして、「とんかつ」に日本酒を合わせてみます。意外な組み合わせのような気もしますが、日本酒が「とんかつ」の脂をさらりと流していく心地良さは、病みつきになるようです。もちろん、締めにどんぶりご飯をいただけば、お腹も心も満たされること間違いありません。こうした本格的な「とんかつ」を自宅で作ることは、きっと難しいだろうと思います。だから、自分が自宅で「とんかつ」を作るときには、掟破り的な「薄っぺらとんかつ」を作ることにしています。スライスした豚肉にたっぷりの衣を付けて、さっと揚げれば、「薄っぺらとんかつ」のできあがりです。キャベツの千切りにたっぷりとレモンを絞って「薄っぺらとんかつ」と一緒に食べると、実は最高の御馳走になります。「とんかつ」も、状況に応じて選びながら食べたいものですね。